CAT GETTING OUT OF A BAG

What the tester is thinking.

狩野モデルの予習メモ

来月開催されるソフトウェア品質シンポジウム2023の基調講演『Kano Modelから品質について学ぶ!』が楽しみです。開催日まであと少しあるので「狩野モデル」を予習することにしました。この記事は自分用のメモです。予習の仕方は、1. 手持ちの技術書の索引から”狩野モデル”を探して読む。2. 気になることをメモする。不定期にゆるく更新します。

📕アジャイルな見積りと計画づくり 〜価値あるソフトウェアを育てる概念と技法〜

11章「望ましさ」による優先順位づけ、より

あるフィーチャ(a, b, c)を狩野モデルとカール・ウィーガーによる相対的重み付け手法で評価した例が載っている。狩野モデルでの評価は、a:線形(あればあるほど良い)、b:当たり前、c:魅力的となる。下に記載した開発の優先順位に従うと、a:2位、b:1位、c:3位となる。一方、相対的重み付け手法で評価すると、a:3位、b:2位、c:1位となる。

✍️それぞれ評価方法がちがうし、どちらが正解というものでもないが、優先順位が変わってしまうのが面白い

狩野モデル
  • 当たり前のフィーチャ:プロダクトが成功するために不可欠である。が、どれだけ幅広く用意しても、品質に磨きをかけても顧客満足度にはほとんど影響を与えない。ある程度満たされると満足度は上がらず、並より高くはできない。
  • 線形のフィーチャ:「あればあるほど良い」もので、線形/一元的という呼び名は、フィーチャの量に対して顧客満足度が線形に高まることに由来する。フィーチャがうまく動けば動くほど(多ければ多いほど)顧客はより満足する。プロダクト価格も線形に増減する傾向がある。
  • 魅力的なフィーチャ:大きな満足やわくわくする気持ちをもたらす。プロダクトの価格を割り増すことができる。部分的にでも実装すれば顧客満足度が大幅に上がる。が、それがないからといって顧客満足度が悪くなることもない。顧客やユーザーは実際に自分が体験してみるまでそれが必要だと気づかないため「隠れたニーズ」と呼ばれることがある。
  • 開発の優先順位*1。1. 当たり前:リリースまでに当たり前のフィーチャを揃える。2. 線形:できるだけ多く完成させる。3. 魅力的:時間の許す範囲で対応する(リリース計画には含めておく)。
  • アンケートした結果、E(魅力的)、L(線形)、M(必須)、I(無関心)、R(逆効果)、Q(懐疑的回答)別に集計する。高得点が2つになるのはユーザーによって期待の抱き方に差があることを示している。この場合は他の要素でユーザーを分類しながら分析する。たとえば、ロール別、企業の規模、業種別など。
  • フィーチャには時間の経過とともに評価が変わる性質(狩野モデルの図の中を上から下へとさがっていく性質)があることに注意。(例:ホテルのWi-Fi

✍️人類に早すぎる発明は時間の経過とともに無関心から魅力的に評価が変わるかもしれない。ストリーミングの時代にアナログレコードの生産枚数がV字回復したり、ちょっと不便さも感じるけど水筒(マイボトル)が見直されたりするので、落ちたら終わりでもなさそう

相対的重み付け手法
  • 投入コストに対してより大きな価値を生むフィーチャを探す手法
  • フィーチャを実装することで得られる利点、実装しないことで被る悪影響、開発するためのコストの3つをもとに、フィーチャの優先度をあらわす数値を算出する。

✍️普段の開発では狩野モデルも相対的重み付け手法も使ってないけど、何かを作ろうとしたとき(作ってる最中も)こんな会話をしてる

  • これがあると何が嬉しいの?
  • これがないと具体的にどう困るの?
  • 本当にAが欲しいの? BとCが入らないけどそれでもAが欲しい? 
  • 欲しいのは本当にこれなのかな。違かったりしてー
  • これが欲しいんじゃなくて(リリース済みの)◯◯が気に入らないってことなんじゃないの?

上記は特定の誰か(これが欲しいと持ってきた人)にたいする質問の場合もあるけど、自分としての回答を考えてることが多いかもしれない。たとえば「これがあると嬉しいとしたらなんだろう?」をいくつも考えてるな。無意識でやってたけど、たぶんなにか理由があるのだと思う。なんだろう?

📕魅力的品質と当り前品質(論文)

www.jstage.jst.go.jp

狩野モデルは「動機付け衛生理論」からの類推によって着想を得ている。動機付け衛生理論、知らないので調べる

動機付け衛生理論(二要因理論)

アメリカの臨床心理学者、フレデリック・ハーズバーグが提唱した職務満足および職務不満足を引き起こす要因に関する理論。人間の仕事における満足度は、ある特定の要因が満たされると満足度が上がり、不足すると満足度が下がるということではなくて、「満足」に関わる要因(動機付け要因)と「不満足」に関わる要因(衛生要因)は別のものであるとする考え方。
元々は、1959年にハーズバーグとピッツバーグ心理学研究所が行った調査における分析結果から導き出された。約200人のエンジニアと経理担当事務員に対して、「仕事上どんなことによって幸福と感じ、また満足に感じたか」「どんなことによって不幸や不満を感じたか」という質問を行ったところ、人の欲求には二つの種類があり、それぞれ人間の行動に異なった作用を及ぼすことがわかった。たとえば人間が仕事に不満を感じる時は、その人の関心は自分たちの作業環境に向いているのに対して、人間が仕事に満足を感じる時は、その人の関心は仕事そのものに向いている。ハーズバーグは前者を衛生要因、後者を動機付け要因と名づけた。前者が人間の環境に関するものであり、仕事の不満を予防する働きを持つ要因であるのに対して、後者はより高い業績へと人々を動機づける要因として作用している。

ハーズバーグの二要因理論 – リーダーシップインサイト より一部抜粋

表1 評価の二元表、より

  • 魅力的評価:あれば満足、なくても{仕方ない、何とも感じない、当然}
  • 一元的評価:あれば満足、ないと不満
  • 当り前評価:あれば{当然、何とも感じない、しかたない}、ないと不満
  • 無関心評価:あってもなくても満足も不満も感じない
  • 逆評価:あるのに不満、ないのに満足を感じる

✍️狩野モデルのあの図しか知らなかったので、二元表に「何とも感じない」と「しかたない」が入っていてちょっと感動してしまった

表2 集計結果と各品質要素の傾向、より

✍️品質要素の(12)置き場所、というのはどういう感じのアンケートなんだろう?

3.3 集計結果の検討、より

  • 評価の傾向が「魅力的」の場合、「無関心評価」「逆評価(ないほうがよい)」した回答者が他の品質要素に比べて多いという傾向がみられる。このタイプの品質要素は使用者の価値観の多様化が反映されやすい。

✍️逆評価:iOSアプリのTwitterタイムラインをスクロールすると画面下部のメニューが自動で隠れてしまうようになった。多くの人は魅力的と感じるのだろうか。慣れたら使いやすくなるのかと思っていたけど3週間たっても慣れない(気に入らない)から、このUI仕様はわたしにとっては逆評価。無料で使ってるけど逆評価。メニューが隠れるタイミングで画面上部の切り替えタブ{おすすめ、フォロー中}も隠れる。これにより画面みちみちにツイートが表示されるから、タイムラインを読むことだけに集中したい人には嬉しいのかな。それともできるだけ多くのプロモーションを表示したいのか?とか変なことを考えてしまう。無料で使ってるのに…

Twitterタイムラインのメニュー

✍️自身のプロダクトでも(わたしにとっては)逆評価のものがある

✍️もうひとつの逆評価「ないのに満足」は、普段あまり意識したことがなかったけど、実装して試してみたら使いづらくてやめた(なくした)ケースもあるので、小さな変更レベルで遭遇してそう

  • 回答者の属性によっても品質要素に対する評価の傾向が把握できる(図3)テレビの映り具合(年齢別)で年齢が低いときは、一元的評価が2割、当り前評価が8割だが、年齢が高くなると一元的評価が4割、当り前評価が5割、それ以外が1割となる。

✍️この結果は当事者(高齢者!)としてとてもよくわかる。きれいに映れば映るほど見やすいので嬉しい。一元的評価と当り前評価はこんがらがってしまうときがあるので、そんなときはこの例を思い出そう

 

あとで書く

 

*1:本書では順位は書いてない。文章から読み取った順位。